竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】スズキ・スイフト「走りのよさが好評。高い安定性が安全性につながる」(2024年7月号)

この記事は2024年7月17日に「CAR and DRIVER」で公開された「竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】スズキ・スイフト「走りのよさが好評。高い安定性が安全性につながる」(2024年7月号)」を一部編集し、転載したものです。

2004年にスズキが世界戦略車と位置づけて投入したコンパクトカー、スイフトは、2023年12月のフルモデルチェンジで4代目へと進化した。ひと目見てスイフト、とわかるデザインを継承しながら、走りのよさについても初代から受け継がれてきている、と竹岡氏は語る。開発信念に基づいた走りのこだわり、大切にした部分について、改めて検証してみた。

「走りのいいコンパクトカーとなると、やっぱりスイフトだよね」 この会話、クルマ好きの方なら、ほとんどの方が“フムフム”と頷いてくださるのではないでしょうか。この際立ったキャラクターこそ、スイフトのヒットの真相!なのです……って、のっけから結論を書いてしまった気もしますが、これに関しては読者の皆さまからも異論反論はたぶんないことでしょう。

そんなスイフトの起源ですが、スズキでは2004年に世界戦略車として登場したモデルを初代と位置づけておりまして、2023年12月にフルモデルチェンジした現行モデルは4代目に当たります。

それにしても改めて思い返しても、この初代はやはりスゴかった。いまでも語り継がれるモデルのひとつですが、ここから進化したスイフトスポーツは、あの独ニュルブルクリンクのコース走行用のレンタカーとして認定されているほどの実力派。それもこれもベースがいいからこそなわけですが、ボディ剛性、ハンドリング、どれも欧州のコンパクトカーに引けを取らないものに仕上げられていました。

エクステリアデザイン面でも、あの当時、世界のMINIと勝負できるといわれていたのですから大したものです。インテリアはMINIとは対極的に至ってシンプルでしたが、日本のコンパクトカーの走りの実力を、世に知らしめるモデルとなったのは間違いないと思います。

その方向性と製品力の高さを、ブレずに正常進化させ続けているのも、またスイフトの特徴的なところ。このカテゴリーには名だたるライバルが世界でひしめき合っていますが、皆さんが思った以上にコンセプトをガラリと変えていたり、カタチやサイズが変化していたりと、アレレと思うくらいバラエティに富んだ変貌を遂げていらっしゃる。

時代の変化やユーザーニーズに合わせてなのだと思いますが、スイフトという名前を聞くとパッとあのカタチが浮かび上がり、いつ乗っても「コレだよね!」と、みんなを納得させられる製品力が提供できるのって、実はメチャクチャスゴイことですよね。

もちろん、安全装備や快適装備などは法改正やニーズに合わせてきちんと盛り込まれているのですが、たとえば一見弱点になりそうな、荷室開口部の立ち上がりの高さなども、妥協せずに変えられていないポイントのひとつです。

たとえばツーリングワゴンのように荷室開口部をフラットにするとか、立ち上がりをなるべく低く押さえるとかすれば、確かに荷物の積み下ろしはしやすくなります。でも、スイフトは利便性よりも、あの部分の立ち上がりを大きく取り、全体的に開口部の形状を工夫することで、ボディ剛性の高さを保つほうを選択しているんですよね。

もちろん、ワゴンのような荷室に特化したカテゴリーのクルマではないからという事情もあるでしょうけれど、運動性能には妥協しませんという姿勢が伝わってきます。

とはいえ4代目モデルでは、やはりユーザーニーズが大きいのか、この荷室開口部が少しだけ広がりました。それでも、ライバルに比べると“まだそこには妥協しないぞ”という姿勢が見て取れます。でもそれって、私はイイコトだと思います。

他にも、プラットフォームやボディなどは熟成を進める方向で開発されていて、剛性は着実に上がっていますし、デザインも空力を考慮したものになっていて、日常的な燃費のよさなどにも貢献することで「クルマと日常を楽しめる」というコンセプトを掲げています。なんとなくイメージ的には、スポーツを日常に持ち込んだ感じがするんですよね(笑)。

エンジンも進化を続けていて、今回は新開発の1.2ℓマイルドハイブリッドエンジンとCVTの組み合わせがメインとなっていますが、MTモデルがきちんと残されているのが好印象。しかも、ベースグレードではなく、真ん中のモデルに設定されているところに、きちんとユーザーのことを思う気持ちが伝わってきました。MTモデルって、イマドキはスポーツカーでもない限り、社有車廉価版的な位置づけに回されがちですからね……。

だからこそ、実際乗るとシフトフィーリングを含め、なかなか楽しめるモデルに仕上がっていました。無論、今回試乗したCVTモデルのほうも、引っ張っられて唸り声を上げるということも少なくなり、快適にクルージングもできます。

しかし、そういった走りに振った話をすると「私はそんな走りはしないから……」なんておっしゃる方もいますが、実はレーシングカーもドライバーがねじ伏せなきゃいけないマシンではなく、乗りやすいクルマほど速かったりするんですよね。思ったとおり操れるクルマ、サーキットでも日常でもコレがいちばんなんです。

しかも安定性が高いから安全性も高くなると、いうことナシ。今回のスイフトはとくにブレーキ性能など制動性に妥協することなく日常域でも使いやすいものに仕上げられています。というわけで、冒頭とはちょっと変わって「スポーツを日常に持ち込んだ」 これを新型のヒットの真相にいたしましょう。

●スイフト「ヒットの真相」

1)初代から受け継がれている走りのよさは最新モデルの4代目でも健在。欧州のコンパクトカーにも引けを取らない実力を持つ

2)マイルドハイブリッドに5速マニュアルトランスミッションモデルを初設定。新開発のCVTは軽量化を実現して静粛性を向上

3)走りの装備を優先しながら使い勝手を向上。さらに最新のセーフティサポート技術を装備して安全性を高めた

Writer:竹岡圭、Photo:原田淳

(提供:CAR and DRIVER)

2024-07-25T08:11:06Z dg43tfdfdgfd